まとめ

今回の事業で得られたことは、大きく次の3点にまとめることができると考えています。

第一に、利用者対応について、事例発表に基づいて深く検討することができました。今回の研修会では、利用者対応について、4つのテーマから検討を深め、各テーマで議論されたポイントを本報告書にまとめました。また、利用者対応について直近と将来とのバランスをとることの重要性です。短期的には、「利用者のニーズの把握・見極め」と「ハウス運営者としての力量・リスクの見極め」のバランスをとることが重要です。ただし、長期的には、対応すべきニーズに応えられるよう、運営者側の体制づくり・能力の向上も重要であることを共有しました。

第二は、研修での気づきの重要性です。今回、利用者対応についての意見交換を通じて、ハウスの多様性に改めて気づきました。各ハウスの運営体制やハウスの構造的な特徴などによって、具体的な活動内容は多少異なってきます。しかしその一方で、闘病生活を送る家族に役立つようにハウスを運営するという基本理念が、各団体に共通していることも強く感じました。研修会参加者からも、「理念は同じだけれども運営方法が違うことで、そういうやり方もあるのかと気づかされた。しかし、多様性の中に共通した部分が見えてくることで、ハウス活動の本質に迫ることができた」という感想がありました。したがって、「唯一の答え」に基づく研修では、各団体の運営状況に合わなくなってしまっていた可能性があります。そうではなく、今回のように事例発表と分科会でのディスカッションを通じて、多様性の中から参加者自らが気づきを得ていくという研修方法が、全国のハウス運営団体の現在の状況に合っているとも考えられます。

第三に、ハウス活動の質的向上のために、研修の重要性を再確認しました。これまでも、利用者対応については、JHHHネットワークの中で意見を交換してきましたが、テーマを4つに絞って事例発表に基づいて検討したのは今回が初めてでした。日本でのハウス活動が始まって約20年経ち、各ハウスでの試行錯誤の中から、利用者対応についての考え方が深まってきている現在だからこそ、このような研修ができたのだと思います。

また、研修会参加者から、「ボランティアマインドに基づく自主性・自発性はハウス活動においては非常に重要だと思っているが、行き過ぎると“独断”になってしまうと思う。独断を防ぎ、常に活動に発展性と成長を組み込むためには、多様な活動を目の当たりにして、自分の団体の活動を振り返るという今回の研修は非常に重要だと思う」という感想もありました。

アンケートからも今回の研修会に対する参加者の評価が高かったので、今後も継続的に利用者対応について、全国のハウス運営団体が集まり意見交換を続けていくことの重要性を確認することができました。

また、この報告書が、各団体でのハウス運営の質的向上の一助につながればと願っております。さらに、今後もハウスの質を高めていくために、こうした研修会を継続的に開催し、ハウス運営のノウハウを蓄積させ、社会に発信していくことが必要だと考えています。