事例に基づく研修会の必要性とテーマ設定

ハウスの活動は、日本では1990年代初頭にボランティア活動として始まりました。その後、病院が直接運営するハウスや、企業が社会貢献としてハウス運営に参加する形態も広がってきて、現在では、全国でおよそ125施設が運営されるようになっています。ただし、まだハウスのない県があったり、近い場所にハウスがない病院もあったりと、ハウスを増やしていくニーズはなくなっていません。

それと同時に、既存のハウスは、利用者の役に立つハウスにしていくために、努力を重ねていくことが必要です。ハウスを利用する子どもと家族は、自宅を離れて闘病生活を送るという 「非日常」の状況におかれています。利用者の状況はそれぞれに異なるため、一人ひとりのハウス利用のニーズを把握して対応することが、利用者に役立つハウスづくりにつながると考えられます。その一方で、ハウスの安全・安心を保つためには、利用者のニーズに対応できるだけの運営体制や運営者の力量があるか、リスクが何であるかを見極めることも重要です。

そこで、長期的には、ハウスで対応すべきニーズに応えられるよう、運営者側の体制強化や能力向上に努力していくことが必要になります。その一方で、短期的には、「利用者のニーズの把握・見極め」と「ハウス運営者としての力量・リスクの見極め」のバランスをとることが必要だと考えられます。

ハウス運営スタッフが利用者対応の能力を向上させていくためには、このような長期・短期という両方の視点で考えていくことが必要になると考えました。そこで、今回は、長期的視点として「ハウスの新しい役割」と、短期的な視点の「ハウス運営で日常直面する課題」の2つの領域から、各2つ、計4つのテーマを設定しました。(1)「退院後、自宅に戻る前の練習の場としてのハウス活用」、(2)「きょうだい児保育」、(3)「初めてハウスを利用する人への対応」、(4)「対応に苦慮する利用者」です。

(1)(2)は、ハウスの新しい役割に関するテーマです。子どもの闘病生活を支える家族が滞在する場所という役割に加えて、新しい役割を担う場合、どういった点に配慮していく必要があるのか検討しました。

(3)(4)は、ハウス運営の日常で直面する課題に関するテーマです。事例に基づいて、各団体でどのような工夫をしているかを共有しました。

こういった利用者対応に焦点をあてた研修会は今回が初めてでした。これまで、各団体が試行錯誤しながらハウス運営をしてきたことで、ノウハウがある程度蓄積されてきた現在だからこそ、このような研修会を開催することができると考えました。また、研修会の結果を本報告書にまとめることで、ハウス運営者の人材養成を促したいと計画しました。 行錯誤しながらハウス運営をしてきたことで、ノウハウがある程度蓄積されてきた現在だからこそ、このような研修会を開催することができると考えました。また、研修会の結果を本報告書にまとめることで、ハウス運営者の人材養成を促したいと計画しました。

研修会テーマ
1 「退院して自宅に戻る前の練習の場としてのハウス活用」
2 「きょうだい児保育」
3 「初期対応(初めてハウスを利用する人への対応)」
4 「対応に苦慮する利用者」