4. ハウスにおけるホスピタリティ
〜研修会での話し合いをもとに〜

③ コミュニティをつくる

病気の子どもに付き添う家族が、自らの日常性を再構築していけるように、ハウス運営者は「対等な関係」を重視しています。「支援してあげる―支援してもらう」という関係性ではなく、「お互いさま」という関係性を大切に考えています。この点は、ビジネスとしてのホスピタル産業と異なる、ハウス特有のホスピタリティだと考えています。どちらかと言うと、友人知人や親戚、地域での関係性に近いものだと言えます。

闘病生活を支える家族は、大きな不安を抱えていますが、だからこそ現実を受け入れて、自らの力で前に進んでいくことが必要になってきます。そのためには、ハウス運営者から支えられるだけの立場になるのではなく、家族自身ができることはするという「支え合い」が、自分の気持ちを立て直していくことにつながります。

例えば、ハウスでは共有スペースがあり、家族同士が交流できるようになっています。そうした場で、同じような状況にいる家族どうしが気持ちを支え合うことができます。また、ハウスをチェックアウトするときに、次に利用する家族のために、部屋を掃除するということも支え合いにつながります。

家族の自立的な生活に向けた気持ちを支えるために、ハウス運営者は「支援者」ではなく、患者家族にとっての「お隣さん」や「親戚」のような立場が求 められます。地元を離れて生活をする家族は、友達や知り合いなどが近くにいなく、大きな孤独感を持ちながら過ごすことになります。そのような中で、地元の生活で築いてきたような、毎朝挨拶を交わし、何かあればお互い助け合うような「お隣さん」や「親戚」のような存在が、孤独感を持つ付き添い家族の大きな力になると考えています。

ハウス利用者からの声
  • 他のお子さんのお母さま方との情報交換や語らいが、私には子どもを受け入れるカベをひとつ取り除いてくれました。まわりの言葉に振り回されないこと、はげましの言葉を素直に受け入れる心、それに気付かせてもらいました。

  • ハウスにきて、こんなにたくさんの人が私と同じような子どもを持っていることに驚きました。私はこれからも子どものことで悩むこともあると思いますけど、これからは一人じゃなないんだなーって思うことができるし、いままで以上に自分の考え方も広くできるようになっていくと思います。ハウスでの生活を通し、地元ではきっと得られないものをたくさん得ることができました。

  • 私たちは、人へのやさしさを忘れていたのではないだろうか、そんなことを思いながらハウスへ足を一歩ふみ入れて、そこでまた、人へのやさしさ、おもいやりの大切さを感じさせられたような気がします。

研修参加者のアンケートより【キーワード:コミュニティ】
内容
  • 自宅を離れてハウスに宿泊する人のお隣さんになる

  • 誰かに支えられているという安心感

  • 完璧な「もてなし」よりも、ほっとできる「もてなし」

  • 自分のために動いた人のあたたかみを感じ、ホッとすること

  • 「いつでもそこにある」というレベルのサポートを維持する

  • 常にそばで見てあげることのできる状況である

  • 近すぎず、利用者が必要なときに必要な安心感が得られる間柄

大切だと思う理由
  • ひとりぼっちではない

  • 孤立、孤軍奮闘は辛いことばかりが増えるので、少しでもやわらげたい

  • 自分が大事にされていないと周りも大事にできない

  • 不安、悲しみを抱えているとき、ほっとする

  • 心に負担をかけないことが大切

  • 人は人によってこそいやされる

画面TOPへ